日本財団再犯防止プロジェクト

 
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【3/31 New!!!】3/29 農業を活用した再犯防止プロジェクト 最終報告会

 農業を通し出所者の就労を支援する「農業を活用した再犯防止プロジェクト」の最終報告会が3月29日、東京都赤坂の日本財団ビルで開かれた。

 刑期を終えて社会に復帰しても、「居場所がない」という理由で再び罪を犯す元受刑者が増加、刑務所に入所している受刑者の6割を占め、社会問題化している。このため日本財団は再犯防止プロジェクトを2010年10月に発足させ、農作業による更生支援の取り組みを研究する同プロジェクトは2012年に始まり、これまでに10回の会合を重ねた。

 

 報告会に先立ち、プロジェクト委員長を務めた東京家政大学人文学部教授の上野容子氏があいさつした。上野氏は「さまざまな理由で社会の中で居場所がなくなり、生きるつらさを抱え、再犯に走るケースが増えている。更正サイドから取り組んできた就労支援と福祉サイドから取り組んできた生活支援との間に横串を入れたパイロット事業を実践してきた。その双方から見た効果を検討し、生活実態を把握する調査を実施し、今後の支援に役立てていきたい」と述べた。

上野容子教授.JPG(上野 容子氏)

 駒澤大学文学部社会学科教授の桐原宏行氏が出所受刑者の生活問題や農業の効果などについての調査を報告した。

 報告によると、出所者は一般家庭と変わらない家庭構成で育っているが、中学校卒業や高校中退など教育を十分に受けていないケースが多く、7割が平均以下の知的水準という。未成年期の早い時期に犯罪などの逸脱行為に走り、20代から30代の働き盛りの時期に借金などの経済的問題を抱えている。

 出所後の生活問題の変化では、社会復帰に向けポジティブではあるが、もともと直接的に支援してくれる人が少ない上に出所後はさらに減少し、人間関係も否定的で仕事や収入、住居、健康に対する不安感も大きい。「生活にハリがない」「生活に自信が持てない」などの心理的問題が深刻になっている。

 これに対し、農業に従事した出所者は教えられながら覚える農作業を通し、新たな人間関係が形成され、農作物を栽培、販売することで社会貢献意識が高まり、生活にリズムとハリが見られる。調査を通し、桐原氏は「社会復帰の契機として農業は有効性がある」と結論づけた。さらに今後の課題として、就農先を増やすなどの支援の場の量的拡大や連続的な支援システムの構築などを挙げた。

桐原宏行教授.JPG桐原 宏行氏)

 2009年から仮出所者の農業研修(6カ月間)を受け入れているパイロット事業「ふる里自然塾」(茨城県城里町)の塾長である近澤行洋氏が実践結果を報告した。塾ではこれまでに92人を受け入れ、再犯率はわずか2・2%、就農率46%、農業以外の職業を併せた就労率は80%上る。昨年3月から農業研修を終え、出所した就農研修生を受け入れ、トマト栽培などを指導している。近澤氏は「生活手段ではない農という生き方で新しい自分を作れと指導している。経済性、社会性、人間性を作る場として農は活用できる」と語った。

 企画委員のNPOコミュニティシンクタンク「あうるず」の代表、菊池貞雄氏は「人手が足らない地方の農業法人は需要が高いはずだ。しかし障害者には理解があるが、出所者に対してはまだまだ理解が足りない。受け入れ先を増やすためには地域の雰囲気づくりが重要になる」との認識を示した。

 同委員の株式会社「スワン」の社長補佐、佐藤光浩氏も「支援を継続していくには経済的な視点が欠かせない。行政の政策を取り入れた上で出所者、障害者などのマイノリティの小さな組織をつなげるネットワークを構築しない限り解決には結びつかない。ネットワークが日本中にできることを望んでいる」と述べた。同委員の更生保護法人「清心寮」の理事長、清水義悳氏は「出所者の自立とは経済的に自立することでもたった一人で立つことでもなく、人と社会とつながる力をつけていくこと。農業は自然の中で生活の根幹にかかわる生き方をすることで生きる底力がつき、地域との関わりが欠かせない地域産業でもある。人と社会とつながる意味で農業は非常に力があり、可能性がある」と話した。

フォトセッション.JPG

(写真左より、佐藤氏、石川氏、清水氏、桐原氏、上野氏、菊池氏、近澤氏)

報告書はこちらでご覧いただけます。