日本財団再犯防止プロジェクト

 
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カンサイ建装工業株式会社 草刈健太郎社長

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 ーー職親プロジェクトに参加したきっかけは

 東日本大震災の被災地で炊き出し支援をしたときにお世話になった「千房」の中井正嗣社長から「受刑者の就労支援を手伝ってくれないか」と電話をもらったのです。
2005年に脚本家を目指し米国に留学中だった妹が殺害されました。同居していた米国人の男が逮捕され、いくら刑が確定しても、どうやって殺してやろうか、同じ目にあわせたいと考えてばかりいました。そんな目に遭った自分が被害者ではなく、加害者の支援をするなんて。はじめは本当に嫌でしたね。

 ーー心境に変化が

 プロジェクトの活動を始めると、刑務所や受刑者、親、大人、社会など様々な問題がわかるようになり、加害者を減らすことが被害者を減らすことになるのだと気づいたのです。これは妹から課せられた私の使命だと思うようになりました。当初は成功事例を出そうとして、再犯の可能性が少ない軽い受刑者選ぼうとしました。何回も面接をして、選択して雇うとプロジェクトに参加した受刑者の再犯を犯す率は減ります。プロジェクトの目的は「再犯を犯す人を更生させる」です。我が社は面接したらとにかく雇う。どんな人でもいい、全部更生させてやるという気持ちでいます。再犯を犯す可能性が高い人たちばかりなので、辞める確率も高い。だが、そういう人達を更生させる方が原因を追求することになり、未来のためになると信じています。

 ーー最初に雇った少年がプロジェクト第1号でした

 その少年は、親の愛情を受けず、何百回も嘘をつき、ごまかして生きてきた。自分に一度も向き合って生きてきたことがないのです。うちを何度も辞めてはまた戻ってきました。戻ってきたのは5度目ですが、それでも受け入れました。これまでに7人雇い、そのうちの5人が辞めて、2人はがんばって働いてます。辞めたうちの2人は知人のところに世話をして、そこで働いています。雇った就労者が建設業に合うかわからないし、バーで働きたいといえば別の会社に頼むこともできる。職親プロジェクトも知られるようになったおかげで、100人規模の応援団ができて、どこで働こうが、働けるわけです。調理師をしたければ、店で働けるように世話をする。最後に言い訳できないくらい追い詰める。人によっては、厳しいだけではなく優しく接する(追い詰める)ことも必要である。と思っています。

 ーーそれには何が必要ですか

 大切なのは意識(愛、心)です。雇う側に何の問題がなくても、雇われる側に問題があれば、すぐに辞めてしまいます。だが見捨てず、その子たちを追いかけて逃がさない。どうやっても追いかけていって、逃がさない。それが一番重要です。人によって違いますが、この子たちは厳しく育てたら、ほぼ心が折れてしまいます。刑務所の中でコミュニケーション能力を含め心・技・体ともに弱くなっているので、社会に出て荒波にもまれるとほとんどが折れてしまいます。そんな子に何を与えたらいいかと思ったら、やはり愛情です。親から愛情を受けて育ち、社会に出て荒波にもまれる基礎がない者にいくら怒っても右から左にスーッと抜けていくんです。だから愛情を注ぎ人間の基礎を作ってやらなければならないのです。

 ーー会社のみなさんにも同じことを

 私自身が直接、仕事の面倒を見るわけではないので、上司を選ぶ時も考えますよ。そして選んだら、背景には薬物依存症やギャンブル依存症で、こういう特徴があるという診断書のようなものを伝えます。その上で、給料に少しインセンティブを付けます。そうじゃないと役割を与え、重い責任を与えると、失敗した時上司の心が折れていくんですよ。

 ーー社長の心は

 何度も折れましたよ。でも慣れました。結果だけを求めると雇う側も心が折れますが、本当に世のため人のため、街のため、会社のためになることなんです。「犯罪に関わることはない」とみんなが思っているでしょう。だが、ぼくのように突然、妹が殺されることもあります。自分がいつ被害者やその家族になるかもわからない。もしかして加害者家族になるかもしれない。雇用できるのは中小企業が中心でしょう。できる企業は雇って街の安全を担保し、できない企業は雇っている企業に仕事を与えて応援するというように、再犯の根を絶つために各企業が立ち上がって一つにならなければならないと思います。

 ーープロジェクトが社会に根付けば

 受刑者は計算すると3年間で1人あたり4,000万円かかっています。再犯率50パーセント、そのうち職がなく再犯する率が30パーセント。その30パーセントがなくなれば4000万円位が節税できる。ヨーロッパで行っているSIB(ソーシャルインパクトボンド)のように、企業にインセンティブを払ってあげる仕組みを創ることが必要です。また「こういう経歴でこういう依存症があるので、こういう具合にしてください」というような診断書を作り、企業をフォローして、負担をいかに軽減させるかということが鍵になるのではないでしょうか。企業に任せるだけではなく、社会が育てる仕組みも必要です。刑務所、雇い入れ企業、社会、大人、親などもみんなが一体になって取り組まないと人はなかなか更生できません。その仕組みを最初に作りたいですね。

《会社データ》
 ▽本社・大阪市淀川区西中島5ー14ー5ニッセイ新大阪南口ビル5F▽創業・昭和55年7月▽事業内容・建築一式工事
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