日本財団再犯防止プロジェクト

 
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衆議院議員 山下貴司氏

 再犯防止法案成立、民間プロジェクト後押し

 議連事務局長 山下貴司氏に聞く

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 刑務所を出た人の再犯を防ぐ取り組みを国と自治体の責務と明記した議員立法「再犯防止法案」が成立した。基本的施策として、就労支援などの教育・職業訓練の充実、関係機関における体制整備などの人的・物的基盤整備、就業や住居の確保、国民の理解増進など四つの柱がある。今後どのように法律を生かしていくのか、民間とどう関わるのか、議員連盟の事務局長として長年、再犯防止法案に取り組んできた自民党の山下貴司衆議院議員に聞いた。

 

 ――党派を超えた議員立法として十二月七日に全会一致で成立しました。

 犯罪件数自体は減少しつつありますが、最近では犯罪者の六割が再犯者で占められています。その原因をみると、刑務所の出所後に仕事がない、住居がなかったりすることで再び犯罪に走る例が多いのです。

 この法律の目的は再犯を防止する事が日本の犯罪対策の根幹をなすと考えています。具体的には社会復帰のための仕事や住居などの居場所の提供や出所後に自活できるように刑務所内でも職業訓練に充実などです。「職親プロジェクト」などの日本財団の先進的取り組みにようやく国も追いついていこうとしているところです。

 もともとは自民党の更生保護議連などで再犯防止に取り組んでいたところ、衆議院法務委員会の委員が海外の刑務所などの視察に行くなどしているうち、超党派で取り組もうじゃないかということで超党派再犯防止議連が生まれました。実際、平成28年だけでも安倍総理や昭恵総理夫人を始め、百六十人以上の議員が刑務所や更生保護施設に視察に行き、取り組んできました。その中で、議連として再犯防止施策を提言したのですが、やはり民間の取り組みをバックアップするには法律が不可欠であるということで今回の超党派の議員立法として提案されたのです。

 出所後の住居問題や薬物依存症対策、仕事のスキル、学歴がないことによる就職難など再犯防止は総合的対策が必要ですが、これまでは各省庁の連携がとれず、各省庁ごと各局ごとの対策になっていましたので、各省庁に横串を刺す政府全体の総合計画に基づいた再犯防止対策が必要でした。

 ――具体的にはどういうことが考えられますか。

 薬物依存症の場合には、犯罪者のレッテルを貼るよりは薬物依存症の治療が効果的な場合があります。また、自立して生活ができない場合は生活するスキルを身につける、または生活自体を支援することも含まれます。少年犯罪の場合、少年院に入ると、高校中退となり就職にも不利になりますが、少年院内などで高校卒の資格を取得できるようなことももっと必要でしょう。

 ――職の提供など職親プロジェクトと近い考え方ですね。

 素晴らしいヒントをいただいたと思っています。今回の法案に自立支援ホームという項目がありますが、これは職親プロジェクトが推進していること近いですね。われわれは民間が取り組んでいる事もいいもの、成功しているものは国の政策としてどんどん取り入れ進めようしています。

 法律は基本法なので実際には法務省が中心となり再犯防止推進計画を作成しますが、今回の場合は閣議決定であることが肝であり、各省庁に横串を通し、仕事や健康であれば厚労省、住居は国交省や総務省など、今後の計画の中にいろんなものを織り込んでもらいます。

 ――地方自治体や民間団体に対しては

 努力義務を設定しますが、いい取り組みをしている自治体には全国にどんどん紹介し、安全な自治体や再犯防止に熱心な自治体はアピールにもなるでしょう。民間団体の援助をという項目もあり、今後は日本財団に限らず、さまざまな民間団体もバックアップできると期待しています。

 ――一般企業が雇用するにはまだハードルが高いようです。

 すでにある厚生労働省の奨励金を拡充し、より効果的なものにしたいと思っています。税制の優遇措置などなどいろんなメニューが考えられますが、保護司や協力雇用主、民間団体などのヒアリングの中でいい事例をすくい上げるつもりです。ほかにも社会を明るくする運動月間と同じ七月を法律で再犯防止推進月間と制定し、相乗効果を狙っています。

 ――再犯者が減るために最も必要なことは

 居場所だと思いますね。検事をしていましたが、やっぱり居場所がない人が多く、どうせ俺なんかと自己否定をするんですね。そういうことで一線を越えた人も多い。自分に声をかけてくれる、気遣ってくれる、そういう人や場所が必要で、そういう人や場所があれば、犯罪に走ることが少なくなると思います。

 ――いいこととわかっていながら、出所者の雇用がなかなか社会に浸透しません

 世間の偏見もありますし、再雇用するにしても何か盗まれるんじゃないか、犯罪者は怖いという思いもあるでしょう。私が検事になったのは「あしたのジョー」のように涙橋を逆に渡る、手塚治虫の「火の鳥」(鳳凰編)のように極悪非道な人間が改心して仏師になるとか、そういう部分に魅了されたことも理由の一つです。岡山の地元では警察のお世話になるやんちゃな奴もいましたが、いまでは良い経営者や家庭人に変わっているわけですよ。そんな経営者の中には若い奴に自分の失敗を繰り返させたくないと思っている人も多いと思います。私は立ち直りを手助けした思いと立ち直りたいという思いの間にある偏見や制度の障害を取り除きたいと思っています。

 ――今後については

 協力雇用主の登録は一万六千社以上ありますが、実際に雇用しているのは約八百社しかありません。少ないように感じられますが、これだけ登録が多いといことは職を提供したいという経営者はいるのです。これからも法務省に任せ放しではなく、議連もしっかりと関わり、保護司や協力雇用主などのお話を聴いて提言に盛り込んでいき、雇用の後押しをしたいと思っています。細かな部分を作成しなければいけませんが、職親プロジェクトのいい部分を参考にしながら一緒に前進していきたいですね。

【プロフィール】

 昭和四十年、岡山県生まれ。東京大学法学部卒。在学中に司法試験合格、検事として法務省や東京地検特捜部などを歴任。平成二十四年十二月、公募候補者として衆議院岡山二区に出馬し当選、現在二期目。現在、自民党厚生労働部会長代理や「超党派で再犯防止を進める議連」事務局長などを務める。

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