日本財団再犯防止プロジェクト

 
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中間支援施設 良心塾

塾生と話す講師の多喜博子さん=良心塾.JPG

 刑務所や少年院を出た後、「職親プロジェクト」により、働く場と住まいを提供された人が学び直しを行う「良心塾」(大阪市福島区)。「考える力を付ければ必ず変わる」として、福岡の「そんとく塾」をモデルにリサイクル会社「ヒューマンハーバー大阪」(黒川洋司社長)が平成27年12月に設立した。

 良心塾には現在、17歳から25歳までの男性3人の塾生が教室の上の部屋で寝食をともにし、別々の職親企業で働いている。授業は週1~2回。数学や国語、英語のほかに社会常識を学ぶ「金銭」や「生活」、自分と向き合う自己啓発の「キャリア」の授業もある。

 黒川社長が経営するプログレッシブの美容院で働くユウジ君(仮名、18歳)は「置き引きで捕まりました。お金に困っていたとかそういう感じではなく、非行することが日常だった」と話す。

 もともと美容師になりたかったユウジ君。在院中、美容師希望であると相談した結果、親との関係がよくないため、職と住居が提供される職親プロジェクトに応募し、プログレッシブで働くのが美容師になる一番の近道だった。

 週に1回、授業に出席し、週5~6日はお店で働いている。当初仕事に入る機会はもっと少なかったが、働いて仕事を覚えるのが最短距離だと思い、増やしてもらった。また、今年10月から3年間、通信制専門学校にも入る予定だ。

 「お店で修業をしながら通います。卒業する3年後にはカットできるようになっていたいですね」

 働きながら授業を受けることについて、「高校の授業と比較し、人として成長することが目的の授業なので、私生活に反映されやすい。まだまだ敬語とか社会常識がないので、経験豊富な先生にいろんなことを教わっています。何でも吸収しようという気持ちになっています。職場や私生活で困っている事があったら、すぐに相談できるのが一番です」

 

 お好み焼き「千房」(中井政嗣社長)で働くタカシ君(仮名、17歳)は施設を出た後も家族がいる自宅に帰りたくなく、職親プロジェクトに応募、昨年12月から良心塾に住み、お店で働いている。11カ月施設に入っていたが、「もう行きたくない」という。

 学費がなく高校に行けなかったため、3月には改めて高校を受験する予定だ。そのため、特別に中学校の教科書に沿った受験用の授業も受けている。「覚悟を決め、奨学金で大学に進学する。中学校の社会科の教師になりたい」と未来を思い描いている。

 苦手な授業についてと尋ねると「試験が近いのでキャリアのような授業よりも勉強がしたい」というと、ユウジ君が「タカシこそ、自己分析や生活習慣を身につけることが大切じゃないのか」と言われ、苦笑いする。年齢がバラバラの共同生活。一番年下とあって弟分的存在のようにみえた。

 オレオレ詐欺で2年7カ月間、刑務所に入っていたヨシアキさん(仮名、25歳)は焼き肉「牛心」(伊藤勝也社長)のキッチンで働きながら週に2回、授業を受けている。「中学校の授業も出たり出なかったりだったので、こんなことをしていたのかという感じ。授業の中では数学が苦手です。連立方程式なんかは全然わかりませんでした」

 さらに店舗に出る前に「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5Sを本社で学び、課題図書を読み、感想などを発表する活動にも参加している。「すごく自分勝手な自分でしたが、懲役に行ってから他人の話を聞き、他人のことに気づくようになった」。みっちりと調理や接客を学び、3年をめどに独立し、自分の焼き肉屋を持ちたいという夢もできた。

 3人で共同生活をしていることについて、「必要だと思います。そのまま社会に出るよりも、境遇が理解できて、同じ気持ちを持っている仲間がいることで頑張れることもある」と語る。

 教室には時間割とともに、「講義の開始及び終了時は講師に対し、起立して礼を行うこと」「講義中は節度ある姿勢を保持し、言葉遣い等失礼のないようその言動に責任を持つこと」などの「塾生の受講心得」が貼り出されている。

 開設当初から講師を務める多喜博子さんは「当初はコミュニケーションを取りすぎ、塾生との距離が近づきすぎた」との反省から、良心塾は保護施設や更生支援ではなく自立のための教育支援であることを再確認し、「ある程度の節度を持って接し、授業を行うようになり、講師と塾生とのいい関係が保たれている」と話している。

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