活動内容
PROJECT

INTERVIEW
インタビュー
アイエスエフネットグループ 渡辺幸義 代表
企業
全スタッフ約3000人の40%、およそ1200人が就労困難者からの採用。多くの就労困難者を積極的に雇用している、アイエスエフネットグループ渡辺代表にお話を伺いました。

- こちらの会社ではどんな仕事をしていますか。
- アイエスエフネットグループの母体となる株式会社アイエスエフネットは2000年に起業しましたITの会社でして、ネットワークインフラの構築や、運用、保守、ITエンジニアの派遣などを行なっています。日本のみならず海外でも事業を展開しており、その中で働いている人の40%ぐらいが実は元就労困難者なのです。社員はグループ全体で3000人ぐらいいるのですが、その内の約1200人は障害者を含めた一般的に就労が困難とされる人々です。障害のある方へはいろいろ仕事を切り出すなどして、それぞれの方にできる仕事を行なっていただいています。
- 職親プロジェクトで採用された人には、どんな仕事を任せていきたいというイメージですか。
- 基本的には、犯罪歴がある方には普通に働ける方が多いと思いますので、どちらかというと、その方の「働くスキル」の問題というよりも偏見や差別によって「働く機会をもらえていない」ことの方が多いと考えています。当グループの30大雇用(参照1)のカテゴリーの中では、犯罪歴のある方に限らずそうした方はたくさんいらっしゃり、IT関連の業務はもちろん、IT以外の仕事もやっていただいています。当グループは元々無知識・未経験の雇用から始まったという経緯もありますので、ほぼ問題なく働けると思っています。
- 職親プロジェクトで来られた方は。
- 現在収監されている方を採用しまして、4月から入社していただきます。
- その方にはどんなお仕事を?
- 一般的な管理事務業務に携わっていただこうと考えています。
- 職親プロジェクトを含めて就労困難者に仕事をと、考えられたきっかけは何だったんでしょうか。
- 全員に働く権利がありますから、会社サイドがその環境をつくることによって働ける人が増えればと私は考えています。そういったことをやりたくて、事業ごとに様々な会社を創りました。一般的にそうした就労困難な状況の方は、それぞれ理由があって就労困難になっているわけですから、その理由によっては、「雇うと会社に不利益になるかもしれない」と思われてしまうようです。まだ雇ってもいないのにそう考える会社がある中で、私は雇ってみたわけです。すると、皆働くことができ、問題なく会社も運営できることがわかりました。当グループに就職できた元就労困難者の方たちはとても喜び、一生懸命働いてくれています。
- なるほど。それで飛躍的に事業も伸びているわけですね。
- 彼らの能力をちゃんと正確に知って、働く環境の配慮をしてあげること。それが一番大きいと思います。日本は今、人手不足で需要の方が大きい状態です。それに対して人的供給が足りない状況になっています。ただその"人的供給"というのは、"すべてのことに対してあまり問題なくこなすことができる人財"というのが基本になってしまっています。そうなると例えば、私たちが採用している、コミュニケーションが苦手という人や、ある部分ではすごく能力が高いのだけれどある部分においては非常に能力が欠落している所があるという人は、なかなか出番がないのです。企業側が、一連の業務の中から彼らが得意とするような仕事を部分的に切り出す仕組みをつくるとか、ちょっと環境を配慮してあげる。例えば在宅で働いてもらうなど、工夫すればほとんどの人が働けるわけです。
- すごく革新的な考えですね。
- アイエスエフネットを創業した当初はスキルのあるエンジニアが集まらず、必要に迫られて当時の業界では考えられない"無知識未経験者"の募集採用を、人間性を軸として行なったのですが、機会をもらった彼らはとても素晴らしい働きをしてくれました。今でも採用時には、過去や経験にこだわらず人間性を軸とした採用を行なっています。また当グループでは、30大雇用というのを掲げています。グループ全体で約3000人もの社員がいますから、中には犯罪歴があることを告知してくる人もいます。その人には先ず告知してきたことを褒めます。ただ、例えば窃盗癖がある人を経理に入れるわけにいかないので、そうした癖が出ないよう、適切な配置をしていきます。それ以外は他の人と同じ扱いをしています。そうすると、同じ問題は起こさないし、一般的な社員よりも辞めない。ロイヤリティーは高いです。
しかし、なかなかそういうことを認めてくれる会社は少ないです。
私は、人生において誰しも一歩間違えれば犯罪者になる可能性があると考えています。盗みをしているその場を見つかったら捕まることがあるかもしれませんが、たまたま見つかっていないという人も恐らくいることでしょう。精神的に追い詰められていて、気持ちのブレからそういうことをしてしまった人もいるかもしれません。犯罪歴のある方は、それらの罪を清算したわけだから、差別をするのではなく、普通に私が愛情を注いで対応したらどうなるかを見てあげたいのです。恐らく問題は起こらないでしょう。今回、そうした方を雇いましたが、私はしっかりとその方の今後を見たいと思っているのです。
同じ"人間"ですから、生まれた時から悪い人というのはいないと思うのです。
- よりやる気になって働いてくれる可能性も高いということですね。
- そうですね。犯罪歴のある人は基本的に就労に対して謙虚な人が多いです。「入社してやるよ」なんて言う人はまずいないです。ですが、「入れてください」ってお願いしても受け入れられないことが続くと、どんどん心が荒んでいくわけです。
ですが、私が日ごろ対応しているのはそういう方ではなくて、面接の段階から、生意気な態度であったたり、場の空気を読まないような方たちです。
- それは障害ですか。
- 障害のある方とか、障害者手帳が出るか出ないかのボーダーラインの方です。他の会社に行っても、この方たちは恐らく受からないでしょう。でも当グループは違います。障害からくる行動を治すということは、左利きの人に右手で文字を書きなさいと言うようなものです。治すことはできませんから、それらを除いて考え、雇用しています。
- 障害を持たれた方の中で一番多く雇用されているのは、精神の方ですか。
- そうです。仕事はIT関連の業務が多いですね。あとは、飲食であるとか、もう少しローレベルの仕事であるとか。精神疾患のある方は真面目な性格の方が多いので、まずは簡単な仕事から徐々に始めてもらいます。医師と連携して薬を服用してもらいながら体調コントロールするといったことにも気をつけています。本人の能力以外の部分で配慮しないといけないことが多分にあります。
- 社長はこれからも就労困難者の受け入れを積極的に進めていきたいと...。
- 私のところに来たら、私は雇える人はできる限り雇います。企業の就職面談で何十回も落ちている人たちに会社へ来ていただき、私から直接当グループの考え方や、彼らの未来、可能性について話をしています。疑いの目で見られたこともありますが。
- 疑われるとは。
- そんな説明会や面談を行う社長なんて、裏がありそうでなんとなく怪しいですよね。だから疑われるのです。職親の場合はもともとプロジェクトがあるので疑われませんが、当グループでは30大雇用、例えば生活保護受給者やDV被害者、難民など、様々な就労困難な方の雇用を行っています。新しい雇用に取り組むたびに、疑いの目で見られました。例えば生活保護受給者を雇って、非常に辛い仕事をやらせるのではないかとか、貧困ビジネスをやるのではないか、といったようなことを思われてしまうのです。今は、かなり取り組みが広まって認知されるようになってきましたので、そのように疑われることは少なくなりました。
- 社長の思いとして、就労困難者をたくさん受け入れて良かったなと思われるのはどんな点ですか。
- 自分が一番変わったと感じています。世界が広く感じられるようになり、感謝の気持ちを更に持てるようになったと同時に社会の問題を強く感じました。自分でできることは何でもやろうと思いました。そしてこの私の思いを社員と共有することで、社員も変わっていきました。
- 社員の皆さんどんなふうに変わってきたんですか。
- 私から思いや情報の共有を行うことで、先ず知識が入ります。それから、例えば採用担当が私の就労困難者に対する面談を目の前で見ます。私の面談は、目を見て、その人そのものを見て、採用を決めていきます。決して中途半端なことではなく、ど真剣な想いをもって雇うことを決めるわけですから、それは相手にも、一緒に立ち会っている採用担当にも伝わります、必ず。
その上で、採用した彼らの強みを活かして、社会の中でしっかりと役立つことができるようにしていきますから、そういうことを社員が感じとると、おのずと変わっていくのです。
- いろんな方を雇用されて16年会社が続いていらっしゃる秘訣は。
- 彼らを舞台の上にあげることです。私は黒子ですから。30大雇用に該当する方の中には、これまで舞台の上にあがったことがない方もいますから、私がその舞台をつくり、観客を用意し、主役として活躍してもらうのです。その舞台も、今ではみんな周りの人が用意してくれるようになりました。
- 職親プロジェクトへの参加を検討中の会社へのメッセージをお願いします。
- 初犯で雇用環境があると、再犯率が1/6に下がると聞いたことがあります。雇用されるかどうか、そこにあるのは偏見だけであって、彼らはすでに罪を償っているわけですから、社会は環境をつくるべきではないかと思うし、もしその環境を作ることで再犯率が減るのであれば、最終的には世の中の犯罪が減るわけですから、自分達の住む社会全体が幸せになりますよね。これを避けて通ると、また犯罪率が上がり、間接的にも直接的にも自分のところに返ってくる可能性があるのではないでしょうか。ですから、自分には関係ないということではなく、地域社会の一員として意識して取り組んでいくほうが、やはりいいのではないかと思います。私たち企業人というのは、地域社会に生かされていますから、こうした取り組みによって、もっともっと素晴らしい環境になるのではないかと思います。
(参照1)30大雇用・だれにでも働けるチャンスを提供。
1.ニート・フリーター
2.FDメンバー(Future Dream Member)
アイエスエフネットグループでは障がいのある方を「未来の夢を実現するメンバー」として、FDメンバー(Future Dream Member)と呼称しております。
3.ワーキングプア
4.引きこもり
5.シニア
6.ボーダーライン(軽度な障がいで障がい者手帳を不所持の方)
7.DV被害者
8.難民
9.ホームレス
10.小児がん経験者
11.ユニークフェイス(見た目がユニークな方)
12.感染症の方
13.麻薬・アルコール等中毒経験者の方
14.LGBT(性的少数者)
15.養護施設等出身の方
16.犯罪歴のある方
17.三大疾病
18.若年性認知症
19.内臓疾患
20.難病
21.失語症
22.生活保護
23.無戸籍
24.児童虐待の被害者
25.破産者
26.父子家庭・母子家庭
27.記憶障がい
28.就労国の言語が出来ない 且つ 専門スキルがない外国人
29.不妊治療中の方
30.その他就労困難な方(介護中の方)
大雇用(自己申告による)30項目の該当者に対して、これらの項目を理由に採用の合否を決定しない。履歴書や過去を重視せず、未来への意識を持った人、同社グループの倫理やCSホスピタリティの習得に向けて努力をしていただける方の採用を行っている。
- 【アイエスエフネットグループ】
- 《会社データ》東京都港区赤坂8-4-14 青山タワープレイス8F
《事業内容》インターネット関連・障害者派遣