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INTERVIEW

インタビュー

株式会社小学館集英社プロダクション 喜田力 取締役(エデュケーション事業局)

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株式会社小学館集英社プロダクション 喜田力 取締役(エデュケーション事業局)
こちらの会社では、職親プロジェクトに関連する分野としては、どんな仕事をされているのですか。
当社は平成19年4月から日本で初めて官民の協力による刑務所運営「美祢社会復帰促進センター」(山口県美祢市)に参画し、受刑者の更生や社会復帰に関する各種支援業務を国から受託してやっているんです。全国で5カ所、美祢社会復帰促進センター、喜連川社会復帰促進センター(栃木県さくら市)、黒羽刑務所(栃木県大田原市)、静岡刑務所(静岡市)、笠松刑務所(岐阜県羽島郡)、それ以外の刑務所や少年院等刑事施設には、更生や社会復帰を支援するさまざまな教育資材を納入したりしています。罪の分だけ自由を束縛するのが刑務所の目的の一つでもありますが、やっぱり一番の目的は罪を償って、その後、二度と罪を犯さず更生することなんですよね。出所後にちゃんと仕事に就いて、ちゃんと税金も払ってということになります。

千房㈱の中井改嗣社長とは、全国展開を行っている大手飲食会社の社長から紹介されました。

「関西に非行やいきづらさを抱えている青少年に仕事を通じて支援している社長さんがいますよ」と紹介されたのです。趣旨をお話したところ、ぜひ社会貢献のためにも、出所者を引き受けたいということになって、職親プロジェクトの前身が生まれました。

当初、当社としては美祢社会復帰促進センターの出所者を1,2名雇っていただければ、と考えていたのですが、中井社長は、最初からこの取り組みをもっと多くの企業の方たちにも広げていきたいという信念があったようです。そんな折り、日本財団から話があって組織化することが出来ました。

本プロジェクトと当社との関わりは、刑務所とのつなぎであったり、職親プロジェクトと企業とのつなぎであったりとか。今定期的に行われている職親プロジェクトの会議に、アドバイザーとして出席させていただいて、情報共有に努めています。現在、職親の企業に採用が決まった受刑者に対して、刑務所から出所するまでの間に準備のための教育やまた出所後も、ちゃんと社会性を身につけてもらうための教育を今後はしていこうかと、考えているところです。
総合出版社はいろいろな事業を行っているんですね。
小学館が親会社になりますが、弊社は、例えばいろいろなキャラクター、『ドラえもん』や『ポケモン』であったりとか500アイテムほどのライセンス(著作権管理)ビジネスを中心としたメディア事業局と、子ども向け中心の教育・保育事業等、エデュケーション事業局があります。子どもの教育もやっているし、教育ということで言えば、受刑者を更生させるための教育もあってもいいんじゃないかっていう、シンプルな発想から元犯罪者に対する矯正教育事業を始めました。各種指導ができる講師や先生をそろえてとか、指導プログラムをつくってというのは元々やっていましたので、それを刑務所内での矯正教育に応用した感じです。
知らない人もいますよね。
多いでしょうね。国と民間による日本で初めての刑務所を、山口県の美祢市というところで開設することになって。更生プログラムや職業訓練を民間に委託しようということで、それができる企業を探されていたところ、うちにオファーがあったんです。

矯正教育なんてやれる企業は日本全国どこを探してもないし、当社ももちろんそのものずばりの教育なんてもちろんやっていませんでした。

ただ、みんな安全な国になれば良いな、って思ってますし、そういった教育の資源を持っているのであれば、やれないことはないかなといった感じでした。

実際に行っているのは平たくいいますと、職業訓練や心理教育や、読み書き、そろばん等の学校教育です。薬物依存を回復させる教育や性犯罪者の再犯を防止する教育といった、あとから開発したプログラムもあります。当社は保育園から、大人向けの趣味の講座もやってます。赤ちゃんから受刑者までというイメージですね(笑)

やっぱり出所後が一番大切なんです。当時も今もそうなんですけれども、仕事に就くとですね、再犯率ががたっと落ちるんですよ。再犯率が20何%とか、半分とかって言われているんですけど、だから10人出所したらそのうちの半分はまた帰ってくる、感じなんですけれども、仕事に就くと10%を切る。結局やっぱり仕事に就くか就かないかっていうところが一番大事ですね。職親プロジェクトはちゃんと書いている字の如く、親の代わりになって、仕事に就いてもらって。狙いはその人に社会復帰してもらうことです。

出所前から準備して、出所後、職親企業のみなさんが、親身になって育てていく、そんな連携ができれば良いですね。
受け入れに消極的な企業も多いと思うんですが。
企業の使命って何なのかって考えた時に、そこで働いている人の生活を豊かにして、ということが第一次的にあると思います。もう1つは社会的な貢献が企業の使命。どんな社会貢献でもいいんですけれども、我々としてはやっぱり、罪を犯した人であったとしても、やっぱり必ず社会に帰ってくるわけですから、帰ってきた人に対して罪を二度と犯さないようにすることは1つの大きな社会貢献であると思っているんですよね。そうした考えから職親プロジェクトに参加されている企業が多いんです。じゃあ参加すると、イメージが悪くなるのか。最初は中井社長(千房)も、社員が不安がっていたと。犯罪者だった人を雇ってお店のイメージが悪くなるんじゃないかと心配していた。でも実はまったくやってみると逆だったようです。応援してくれる人も多いそうです。悪いイメージにはならなくて、企業のイメージが良くなるっていうんですかね。やっぱり社会のためにやってるっていうことが具体的に見える活動だと思うんですよ。
そうですね。ありとあらゆる業種の、ありとあらゆる企業が刑務所から出てきた人、少年院から出てきた人を、あまり意識なく受け入れられるような世の中になれば、再犯率は下がってきますよね。
飛躍的に下がるでしょうね、多分。日本は他の欧米諸国に比べて、犯罪はもちろん圧倒的に少ないですし、再犯率も低いとは思うんですよね。なぜかというと、やっぱり向こう三軒両隣じゃないですけれども、地域で守っていくっていうんですか。育てていくとかっていう、そういうセイフティーネットみたいなものが残っていると思うんですね。

そのためにも、受け入れ企業だけに限らず、関わる周りの人たちが偏見をなくす、受刑者自身も世の中の一員だっていう気持ちを持つようになると、飛躍的に再犯者はなくなると思います。

職親プロジェクトの活動って、つまるところ地域活動の原点だと思います。
【株式会社小学館集英社プロダクション】
《会社データ》東京都千代田区神田神保町2-30 昭和ビル 創業・昭和42年9月1日
《事業内容》メディア・エドゥケーション

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