活動内容
PROJECT

INTERVIEW
インタビュー
セリエ中間支援施設 食育カウンセラー 中村すえこ氏
施設・団体
少年院で学んだ経験をお持ちで、少年院を卒院し帰る家の無い人たちの受け入れ施設(家)を、神奈川県・横須賀で開設準備中の中村すえこさんに再犯防止についてお話をお聞きしました。

- 様々なケースがありますが、どうして再犯してしまうのでしょうか。
- 居場所が重要になると思っています。少年院から出てきて、独りぼっちとか、地元の友だちとは会えないとか。私の場合は、昔の友だちと遊びたかったのですが、絶交されて独りになり、私は再犯をしてしまいました。出院してきた子たちが、社会で生きづらさを感じる事があります。それは少年院出院者だけではなくて、みんな誰にでもあるのでは。社会で生きづらさを感じる時、同じ想いをした仲間たちが想いを共有できる居場所があればと。自分はここにいて良いんだ、自分を認めてもらえる場所であり、自分の力を発揮できる、そうした居場所があると再犯率は下がると私は思っています。
- その居場所とは。
- 学校だったり、部活だったり、仕事だったり。あとは心の居場所ってわかりますか?
- 心の拠り所ですか。
- そうですね。仲間も頑張っているから自分も頑張ろうと思えるような。私がいる団体セカンドチャンス!の居場所作りは、月に1回交流会を開いています、それが心の拠り所になり自分だけじゃなく皆も頑張っているんだって知ることで、自分も頑張れる元気がもらえるんです。再犯が減ることにもつながると思うんです。
- 孤独感とか、疎外感とか、大きいのでしょうね。
- そう思いますね。職親プロジェクトとはちょっと離れますが、セカンドチャンス!の活動では、出院後なるべく早くその子につながりたい、出る前に中で院内交流会をさせて欲しいと思っています。
- 対象は。
- セカンドチャンス!の活動では少年院です。横浜では女子専門の交流会をやっています。そこは少年院とか刑務所とかを区切ることなく、女子ならだれでも参加できます。年齢層も幅広く24~68歳。
- 少年院に入られた方は、愛情に恵まれないケースが多いと聞くのですが。
- 私の時代は元気な子が多かったと思います。流行り病みたいな。今の女子は、社会生活において恵まれてない子が多いと感じています。
- バブルが終わり、経済的に困窮される方が増えているのも原因の一つですね。
- 一例ですが、ある少女はおかあさんが帰って来なくて、家に何にもないから外に行った。表に出たら、おじさんが自分を買ってくれて。温かいご飯と寝る場所を与えてくれて、お金までくれた。その子から見たら良いおじさんなわけですよ。でもその見返りとして体を提供した。
義務教育が終わっていない子は正当なアルバイトもできないじゃないですか。だから少女はそうするしか生きる道がなかったんですよ。
そうしたことが続いていくうちに、その子は逮捕されて少年院に来た。そのことって彼女だけの責任じゃないと思いませんか?
- 思います。男子では。
- おかあさんが再婚して新しい家庭があって帰れない子がいる。
- 新しいお父さんと馴染めないからですか。
- 新しいお父さんと新しい子どもがいて、その子はいらない子。馴染めなくて自分から進んで出ていくならまだしも、親から、あなたはいらないから帰って来ないでと言われる子たちがいるんです。
- 親が悪いですね。
- もっと踏み込んで考えると、親も病んでいるというか。だから負の連鎖ですよね。だけど、その子の幸せは親が奪っていいわけじゃないから。その子が、その子の人生を自分で歩いていけるような社会になってほしいなと思うんです。今まで帰る家がない子って更生保護施設とか、面倒見のいい社長が引き取ってくれていました。職親プロジェクトができたことで少なくとも帰る家がない子でも希望が持てるじゃないですか。すごく大事なことだと思いました。
- 闇が深い感じがしますね。
- 全国に9カ所女子少年院があって、先週沖縄の女子少年院に行って全国全てを周りました。地方の方の話ですが、親もお金がないことで荒んだ生活をしている中で育った子どもが多く、本人の非行だけではない問題がたくさんあると思いました。
- 親子関係が破たんしていると、人との信頼関係を構築するのは難しいですね。
- だから彼らが社会に出た時は、より厳しい社会復帰になります。だからこそ社会復帰のための周りのサポートは必要だと思います。今度始める施設(家)は、元々そういう子が出てきたら、これまでの「お前は、ここで働くしかない。ここを出て行ったら、明日から住むとこがないぞ」ではなく、もしその仕事がダメでも帰って来れる、家を作りたいと思っていて。その施設にいる間に、社会に出る為の最低限の知識は、身に着けさせる。私自身が少年院を出て履歴書を書く時に、健康状態を書くところに「元気です」と書いちゃって。普通は「良好」って書くじゃないですか。そういうこともわからなかった。お米を研ぐとか、日常生活に必要なことをその施設に、来る少年(子ども)に教えられればいいなと思っています。
- なるほど。生活していくためのノウハウ。本来であれば、ごく普通に身につくものを取り戻してあげることですね。
- はい。施設(家)には、対象者のメンタルケアを専門に行うスタッフもいます。
- 奥深いですね。全国の女子少年院を全部回られての印象は。
- 幸せになっても良いんですかっていう質問が数人から出た事がありました。「幸せになったことがないから、自分が幸せになってもいいのか」、「幸せになるのが怖い」、「自分にとって、幸せがすごく遠くにある、自分には掴めないものだと思う」というのが理由でした。幸せを感じたことがないんだって言うんです。その少女は幸せになるのが怖いって、頂点の、幸せになったらあとは落ちていくだけ。その幸せを感じたら幸せがなくなった時が嫌だから、初めから要らない、今のままでいいって言う。つかんだ幸せを失った時を考えると怖い。17、8の女の子が「幸せになっても良いんですか」って言うんですよ。ぼろぼろ泣いちゃいました。
- 辛い不幸を経験されてきたんですね。
- そうだと思いますね。この質問を私はすごく考えることがあって、「もちろん幸せになって良いんだよ」、「誰にでも幸せになる権利はあるんだよって」、答えたんですけど。私たち当事者グループの仲間には加害者、被害者がいて、その被害者や、自分が傷つけた人たちの前で、私は幸せなんだって言えるかって言ったら、言えないって。幸せになっていいですかって言ったあの子たちも、こんな自分が幸せになって良いのかなって。こんな私が幸せになって許されるのかな、みたいな迷いが、どこかしらにあるんです。
そして、彼女たちを知れば知るほど(少年院にいる子たち)、その子たちの後ろ(これまで歩んできた経緯)が見えてきました。彼女たちは加害者として少年院に来ているけど、実は被害者でもあることを知りました。虐待、ネグレストなどです。特に女子は多いと思います。しかし、理由があったとしても少年院に送られた事実だけが残り、地元では悪者扱い。社会の人は、あいつは少年院あがりの悪いやつだからかかわりたくない。もっと酷いのは排除したいと思っている人もいる。
でも、彼女たちは、それしか生きる道がなかったのに・・・。その子たちが少年院でやり直しを誓い、社会に出ると偏見という大きな壁にぶつかる。社会の人の理解がないとこの子たちは、ずっと嫌な思いをして生きていくんです。
彼女自身ももちろん、社会も変わらなければと私は思います。今回の施設(家)はまさに今までの活動の延長線で、この子たちを受け入れケアをして行きたいんです。その施設(家)で、協力してくれる企業はもちろん、職業体験できるところも探してます。
これがやりたいって思ったらそこに向けて進める環境を作りたい。
人は変われるんです。少年たちの新しい一歩を応援できる社会を心から望んでいます。