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INTERVIEW

インタビュー

法務省矯正局・保護局

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やり直しのできる社会の実現を目指す、職親プロジェクトと手を携えて、再犯防止のため様々な取り組みを遂行されている、法務省矯正局・保護局の4人の方にお話をお聞きしました。
(2016年3月8日)

写真・左から、

法務省保護局更生保護振興課社会復帰支援室長 杉山弘晃さん

法務省保護局総務課更生保護企画官 瀧澤千都子さん

法務省矯正局総務課更生支援室長 南部和彦さん

法務省矯正局総務課更生支援室係長 鈴木貴之さん

法務省矯正局・保護局
矯正局の再犯防止のために取り組んでいる施策は。
南部:矯正局と、その所管する刑務所、少年院などの矯正施設では、様々な取組を行っております。その中で社会に戻ったときに再犯をさせない、ということについて何が大切なのか、これは保護局とも共通ですが、まずは仕事と住居の確保ということです。ただ,罪を犯して少年院、刑務所等に入ってきているという前提がありますので、その問題性の除去ということが大切ですし、そこをまず直さないと社会で生活が成り立たないというところがあります。例えば覚せい剤で失敗した人につきましては、覚せい剤に二度と手を出さないためのプログラムであるとか、それから性犯、交通事犯というようなその人の問題性に応じたプログラムを行ってその人たちの問題性をまず除去する。そして、社会に帰る段階においては、職業に就きやすいように、例えば建設機械の免許であるとか、介護の資格だとかを取得させ、社会で今求められている雇用のニーズに応えられる職業訓練を実施して、働ける準備をする。その上で職親プロジェクトなど実際に雇っていただける企業の方々とお話をして、社会に帰る前の段階から就労の内定を頂いて社会に送り出せるよう、様々な取組をさせていただいている現状です。
3月1日の、職親プロジェクト3周年シンポジウムで、堀江さんが、木彫りの熊を彫っても(その技術は)社会で役立たないと話されていたんですが。
南部:刑務作業についてですが、懲役刑でございますので、刑務所に入ったら作業をしなければならず、刑務所の活動の中では教育と並んで大きな柱の1つになっています。刑務所や少年院に入る人の中には就労体験のない人だとか、職業を続けていくという経験だとかがない人もいらっしゃいますので、作業をするということ自体に意味のあるということです。1つの与えられたことを最後までやり遂げるとか、1日椅子に座ってしっかりと目の前にある作業を着実にこなしていく、というようなことができない人には、働くこと自体を学ぶ意味では、木工の作業をすることも大切と思っています。仕事というよりは、生活指導に近いところがあるかもしれません。基本的な人間として仕事をしていく能力を身につけていただく、忍耐力・目的を遂行する能力を養成していくためには、単純な作業であっても、特にそれが社会に出て直接役に立たないように見えるかもしれませんが、必要だと思っています。
保護局の再犯防止の取り組みや施策は。
瀧澤:保護局は社会内処遇、つまり,実社会において,犯罪をした人や非行に走った少年らが同じような失敗を繰り返すことなく、社会人として自立して生活できるように指導したり、支援したりする仕事をしております。社会内での生活ということで、保護観察官と、民間の方々、特に保護司さん、協力雇用主さん、その他民間のいろいろな方々の力を合わせ、指導、支援に当たっているところです。目指すところは矯正局と基本的には共通し、平成24年7月の総合対策、あるいは26年12月の犯罪に戻らない・戻さない宣言を踏まえて頑張っているところです。やはり社会の中で生活していくための基盤としては住居と就労。つまり、きちんと落ち着き先があって、更にその人の力を発揮できる仕事を得て、社会の中で自立していくことが大きな二大柱になりますし、それを実現するためには、お力を頂いている保護司さんがより活動しやすくなるように、保護司さんの活動基盤の整備も大きな柱と思っています。また、特性に応じた処遇、問題性に応じた処遇というのは非常に重要なところでして、性犯罪であるとか、暴力関係の犯罪に対する対処ですとか、それぞれ重要ですけれども、特に薬物事犯者に対する処遇に力を入れています。保護観察期間中においては、問題改善のための処遇プログラムと簡易薬物検出検査を中心にしっかりと指導していくとともに、保護観察期間を終了しても薬物に頼ることなくしっかり生活できるように、地域で依存回復の支援を受けられるような体制を他機関等と連携しながらつくっていく、これらを四本柱として取り組んでいるところです。
職場から逃げでしまうと、再犯につながる可能性が増えます。
瀧澤:いわゆる施策レベルの話とはちょっと違うかもしれませんけれども、長く保護観察官をして私はいろいろな人と出会ってきて、更生する人をたくさん見てきました。更生するまでにすごく時間がかかった人も見てきました。更生を見届けられなかった人もいました。思うのは、根気よく寄り添ってくれる人の存在が大きいなと。それは、親である場合もあるし、交際相手である場合もあるけれども、やっぱり少年の場合では理解してくれる雇主さんであるとか、学校の先生であるとか。一番近い家族と更にプラスちょっと離れたところから温かく見守ってくれる人、しっかりと向き合ってくれる人。そういう人たちの存在というのは、なかなかデータではお示ししにくいのですが、すごく重要だなと痛切に感じています。

南部:我々は矯正施設の中で処遇をするものですから、社会に出てからの行動について,なかなか見えないところがあります。ただ施設の中でも態度が変わってくるだとか、真面目にやろうという気持ちになってくるっていうきっかけというのは、例えば少年であったりすると、初めてちゃんとまともに話をできる大人ができただとかはよく聞く話です。信頼関係がどこまでできるのかというのは、どのステージにおいても、施設の中であっても外であっても重要で、正に瀧澤企画官が言われたように、やはり信頼できる人、見守ってくれる人ができるのは更生には必要なんだと思います。ただ,信頼感ができたからといって必ずすぐに成功しますかといったらそうでもありません。やはりここは長い目で見ていくということが大切だと思います。1つの解決策ですべて対応できるというものではないと思っています。

瀧澤:南部室長のおっしゃる通りで、矯正施設の中で初めて褒められたとか、頑張ったことをきちんと評価してもらえたとか、それでやる気が出たという少年や刑務所出所者は多く見てきましたので、そういった矯正教育の土台があってこそ社会に出てから出会った保護司さんを信じてみよう、雇主さんを信じてみよう、もう1回親を信じてみよう、周りの人を信じてみよう、という気持ちになってくるかと思います。矯正教育における基本的な人への信頼感、あるいは社会全体に対して肯定的なものの見方に本人の気持ちを変えていく、そういった取り組みがベースにあって、社会内処遇で引き受けて伸ばしていくことが大切と思っています。
職親プロジェクトが始まって3年です。再犯を防止して、社会復帰できる人を増やすためには。
南部:再犯を防止するための施設内での処遇は、昔からいろいろなことをやっています。刑務作業も1つですし、先ほど申しましたようなプログラムも1つです。被害者の身になって考えましょうだとか、家族のことを考えましょうだとか、説話をするようなこともありますし,人それぞれの問題性に応じたこともやります。私は少年院の教官を以前やっておりましたが、これをやれば良くなるっていうものはないと考えています。正に人それぞれによって全然違う、対応が変わりますし、同じことは一度もないというのが自分の経験でもありますので,やはりその人その人に応じた、教える側の対応力の幅広さを身につけなさいというふうに教えられるわけですね。ですから、プログラムだとか、認知行動療法であるだとか、個別の面接、SSTと呼ばれるSocial Skills Trainingだとか、そういった、技術も取り入れて,様々なアプローチをしています。ただ、100年以上刑務所の歴史はありますけれども、じゃあこれをやれば、絶対これでうまくいくんですっていう処遇方法があるのかといわれると、それは我々としてもまだ見つけられていない、というのが本当です。ただそのときその人に対してできる最善を見つけていこう、ということで対応させてはいただいています。

瀧澤:難しいですね。人の営みと申しますか、人の生活、人の気持ちの問題ですので、いわゆる画一的なマニュアルであるとか、あるいは魔法の薬のようなものはないのだと思います。であるからこそ、一人一人の事情や気持ちを理解しよう、あるいはこの人のために何かできたらいいのだろう、ということを考えて、先ほどお話した通り、住居、就労、あるいは問題性の払拭、あるいはそのベースとして寄り添っていくことが大切になってくるのだと思います。そういったことを基本にしつつ、やはり相手のことをちゃんと見つめてその人を理解しよう、その人の持っているよいところを伸ばしていこう、という地道な取り組みの積み重ねだと思います。さらに、やり直そうとする人がいるということを、社会全体で理解していただいて、その理解者が増えてくるということが大切だと思います。我々はその理解者を増やすための努力を続けなくてはいけないと思っています。
職親プロジェクトに対しての期待は。
南部:日本財団の取り組みには心から感謝しています。今社会において再犯を減らしていくためにはやはり就労が非常に大切だ、ということは実感しているところですし、それを押し進めようとしているところです。そういう中で正に民間の方の熱い心を集約する形で職親プロジェクトというものが立ちあがってきて、だんだんその輪が広がってきています。今までの我々ができるような就労支援というものは雇ってくださいと、お願いするだけでした。それが例えば仕事フォーラムですとか、企業の説明会だとか、講演会ですとか、様々な活動を通じて、被収容者に直接訴えかける、そして理解してもらって、納得してその仕事に就いてもらう。就労の新しい手続と言いますか、道を提示していただけていることについては、非常に我々としては有り難いと感じております。矯正局としても一緒に手を携えて発展させていくために努力していきたいと考えております。

杉山:刑務所出所者等の就労支援は、法務省保護局、全国では保護観察所が担当しています。実際に刑務所出所者等を雇用してくださる協力雇用主、この方をいかに増やすかと、また、この方々のもとでいかに就労を実現するかに、この数年非常に力を入れて取り組んでいます。こういった中で職親プロジェクトは、民間の立場で刑務所出所者等の就労を継続的に支援していただいて非常に有り難いと考えています。実際に雇用してくださっている企業の皆様が、非常に熱い想いと申しますか、職親という文字の通りですけれども、仕事を提供してくださるということ、それから半ば親の立場でこの人を引き受けるという熱い想いで、実際に施設まで面接に行っていただいて、内定までというプロセスにとても丁寧に取り組んでくださっています。発信力のある会社の社長さん方が想いを持って取り組んでくださっており、有り難い存在だと思っております。また、実際に御苦労された話を保護観察所で協力雇用主の方々、あるいはこれからなろうとする方々にノウハウとして伝えてくださっている職親企業の社長さんもいらっしゃいまして、そういった意味で心強い存在でございますし、これからも手を携えて刑務所出所者等の就労支援が広がるように力を貸していただきたいと考えています。

鈴木:日本財団を初め、職親企業の方々からは、受刑者等の就労先の確保だけではなくて、仕事フォーラムにおいて受刑者等に対して就労意欲を喚起させるようなお話をしていただくなど、様々な御支援、御協力を頂き感謝しております。その上でこのプロジェクトに引き続きできる限り協力していきたいと思っております。このプロジェクトについては、引き続き日本財団、職親企業の方々や保護局を始めとした関係機関との連携・協力の下、発展させていき、そして、受刑者や在院者の円滑な社会復帰につなげられればと考えております。

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